ナレーションのスキルを身につけるための方法

ナレーションの需要は年々増加

映像にピタリとハマったナレーションを聴くと
感動することありませんか?
ここ10年ほど、テレビではVTRを駆使した
いわゆる「完パケ」ものの番組やニュース、
企画コーナーが増えています。

「完パケ」とは、業界用語で「完全パッケージ」
の略。映像にナレーション、音楽などのBGM、
字幕スーパーを入れた完成品のVTRのことです。

完パケの重要な要素であるナレーションって、
いったい何でしょうか?
今回はナレーションに関する考察です。

ナレーションを読むのがナレーター。
アナウンサーの出番です。

テレビは映像が主役

私がナレーションで気をつけているのは、
テレビは映像が中心だということです。
言うまでもありませんが。

映像の邪魔をするナレーションほど、煩わしい
ものはないと思っています。
これは一緒に仕事をしているディレクターも
思っていることです。

例えば、美しい阿蘇の風景をじっくり見せる
企画のときに、騒ぎ立てるような
ナレーションだったらぶち壊しですよね。

テレビを観ていると、オーバーな表現や個性的な
ナレーションに出くわすことがあります。
そんなときは、映像に力がなかったり、
映像が地味だったりするものです。

このケースでは、弱い映像をナレーションの力で
補強しているのです。
映像に登場する人たちが一般の人ばかりだったり、
VTR中のリアルな音が少なかったり、インパクトが
弱いものだったら、それを補うために多少オーバーな
ナレーションで盛り上げることがあります。

そんなときは、ナレーションの存在感が必要に
なってきます。

力がある映像にはナレーションは控えめに

逆に映像に力がある場合はどうでしょうか?

私なら控えめなナレーションにします。

現在、私はレギュラーで情報番組の企画コーナーの
ナレーションを担当しています。
先日のこと、ボリュームのある見た目も派手な丼物が、
画面にどアップで映し出されました。

そのときディレクターから言われたのが、
「これは料理が派手だから、ナレーションは
あまり盛り上げないでください」

そうなんです。しゃべり手というのは、
自分が持つテクニックを駆使して盛り上げ、
存在感を示そうとするんです。

しかし、派手な映像に謳い上げるような
ナレーションを入れたら、映像と音声が
喧嘩してしまって、
これもまたぶち壊しになるんですよね。

ドキュメント制作者のナレーション論

ドキュメント番組は、それこそ映像が命です。

昔のドキュメント番組のディレクター・
プロデューサーが話していたことを紹介します。

「大事なところでナレーションを入れないと、
わからないような映像は失敗だ。
例えば、登場人物が悲しんでいる場面で、
『〇〇さんは悲しんでいる』というナレーションが
入ったらぶち壊し。
ナレーションを入れなきゃ、わからないような
作品なら失敗。
ナレーションは必要最低限の説明にとどめるべきだ」

賛否はあるでしょうし、今の番組作りとは
ちょっと違うかもしれません。
時代によって番組制作に対する考え方は
変わってきます。
何が正解ということはありません。
でも、ナレーションに関しては、この考え方に賛成です。
テレビが映像のメディアである以上、
映像を生かしてこそのナレーションだと思います。

ナレーターの個性って何?

ナレーションを読むのは、アナウンサーだけでは
ありません。
タレント、俳優、声優などさまざまな人たちが
ナレーターとして活躍しています。
中には、取材ディレクターがナレーションを読む
ケースもあります。

全国放送のドキュメント番組を、初めて担当した
某局の女性ディレクターのエピソードです。

このディレクターは、ある個性派の男優のファンで、
自分が番組を作る際はナレーターにこの男優を使おうと
決めていたそうです。

ボソボソとしゃべる独特な間が個性的で
人気があった男優です。

いよいよナレーション撮りが始まりました。
男優はいつものようにボソボソと原稿を読んでいきます。

ところが、よく聞き取れないんです。
女性ディレクターは、何度も撮り直しをしたんですが、
それでもよく聞き取れなかったそうです。
最後には、「もっと声を張ってください!」と
言ったそうです。同席したプロデューサーは苦笑い。
「ボソボソしゃべるのが持ち味なのに、
声を張ったら意味ないだろう。なんでこの男優を
ナレーターにしたんだよ」って。

笑っちゃうようなエピソードですよね。

ディレクターは番組にマッチしたしゃべりを
イメージして、ナレーターを選ぶのです。
これも映像を最大限に生かしたいという
考えからです。

ナレーターに俳優などを起用するのは、
アナウンサーの正確なアクセントや明瞭な滑舌などより、
個性的なしゃべりや「味」を求めるからです。

その個性や味を台無しにするディレクターの指示には、
笑っちゃいますよね。

ナレーションの意味を考える

アナウンサーを目指すなら、発声・滑舌・アクセントの
基本を学びナレーションのスキルを
身につけることが大事です。

スキルにはしゃべりの技術だけではなく、番組や企画の
意図・主旨をくみ取り何を伝えたいのか、
何を伝えるべきかを考える力も養うことも含まれます。

ナレーションのトレーニングは、どうすればいいでしょうか?

それは優れたナレーターの分析をして
真似することだと思います。
話し方、抑揚、スピードなど、ナレーションのプロを
真似していくと自然と理解できることが多いですよ。

ただし、真似るといっても簡単ではありませんよ。
優れたプロのナレーターは、簡単そうに読んでいる
ようですが、高い技術とたくさんの経験があるからこそできる、
計算されたナレーションなんです。
そのノウハウを盗むのが一番です。

それには、ナレーションを録音して何度も聞いたり、
気づいたことをメモしたり、
真似をして実際に読んでみるのがいいと思います。

私も若いころ、何度も失敗してます。
存在感を示したいという気持ちを抑えるのに、
時間がかかりました。
いま考えると恥ずかしいですね。
アナウンススクールでは、
この経験をお伝えしたいと思っています。

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